土井善晴さんの”一汁一菜”の思想

土井善晴さんというとテレビの料理番組のMCを長い間務められてきた著名な料理研究家の一人です。出身は大阪だそうです。家庭料理の第一人者である父親の土井勝さんの後を継いで、家庭料理の研究科の道を進まれました。

土井さんの思想は一汁一菜というタイトルからもわかりますように、料理の原点を一汁一菜に求めます。これにはいくつかの意味が含まれています。

汁というのは味噌汁・お吸い物、菜というのはおかずという意味です。なので一汁一菜というのはご飯のほかにみそ汁とおかずを一品ずつ加えた形式のことを言います。もしくはお味噌汁を具沢山にすれば、ご飯とみそ汁で十分だという形式のことです。

これを基本形にして自分でつくってみることで、色々食について悩まなくても済むようになるというのが土井さんの提案です。

忙しい現代人にとって、料理を仕込みから丁寧にやるとそれこそ一日仕事になってしまいます。しかしまず色々作ることに悩むことよりも、とりあえず一汁一菜に集中してほしいといいます。その基本形がしっかりしていれば、それを入り口にして食の多様性も生まれてきますよという提案なのです。

そこには男女の区別なく、うまい下手の区別もない、料理の大衆化という思想が見え隠れします。大事なのはレトルトに頼らずに自分の目で食材を選び、自分の手で料理することです。一汁一菜ならだれでもシンプルに作ることが可能です。

土井さんの特徴はあの柔らかい大阪弁ですが、あれは「船場(せんば)言葉」というそうです。船場というのは大阪の中心的なビジネス街ですね。船場言葉は江戸時代から戦前期にかけて規範的・標準的な大阪弁とみなされていたそうです。

土井勝さんはもともと庶民料理の立場から料理を考えていましたが、善晴さん自身は料亭の味吉兆で修業を積んでいましたので、最初は戸惑ったといいます。刺身をつくるにも包丁の使い方一つ一つに魂をいれて切っていたのですが、父の勝さんはスパスパ適当に切っていきます。

特に生徒さんから「先生の料理は難しすぎて真似できない」といわれたことはショックだったといいます。そうやって自分の料理に対する美意識と庶民料理の目線の低さのギャップに若い時は苦しまれたといいます。

そうやって人生に迷っていた時に出会ったのが地方にある数々の民芸品の食器でした。質素で素朴で武骨であるがゆえに庶民に愛され使われ続けている食器類に出会うことで、料亭料理へのコンプレックスが抜けたそうです。

最近はBS朝日でも「土井善晴の美食探訪」で番組のMCとして活躍されています。おいそれとはいけないお店ばかりですが、料理人がどういう意図や思いで料理をつくっているのかをうまく引き出して解説してくれています。

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