錦織とコンタドール選手、怪我から躍進の秘密

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去年、錦織選手がテニスの4大トーナメントの一つである全米オープンにおいて準優勝を成し遂げたことは記憶に新しいところですが、このとき錦織選手は足裏のできものを切除したため、大会1ヶ月前はほぼ練習ができない状態でした。

そのため錦織選手自身も大会当初は手探り状態で試合をすすめ、上位を突破する自信はなかったと思います。それが望外の結果を得たのは偶然だったのでしょうか。

実はこの年の夏ほぼ同じ時期ですが、違う競技においても似たようなことがありました。自転車のロードレースにおける3大大会の一つであるスペインのブエルタエスパーニャにおいて、コンタドール選手が見事優勝したのですが、彼はこの大会の1ヶ月前のツールドフランスにおいて落車して右膝の脛骨を骨折したため、錦織選手と同じく1ヶ月間ほぼ練習なしで大会に臨むことになっていたのです。

錦織選手もコンタドール選手も、突発的な怪我によってシーズン真っ盛りの時期にに突然休養を余儀なくされた特異なケースです。コンディションを最高に仕上げることはできず、試合で結果を出すのは普通は難しいと考えられます。

ではなぜ二人は結果を出すことができたのでしょうか。これについては色々な理由があるでしょうし、真相は選手本人にしかわからないと思いますが、外部からもっともらしい仮説を挙げたいと思います。それは”カーボ・ローディング”です。略して「カーボロード」です。

カーボロードというと言葉を知っている人は、試合前日に炭水化物の摂取量を普段より増やすために、例えばパスタを多めに食べるということなどを思い浮かべるかもしれません。

なぜ炭水化物かというと、エネルギーとなる糖、つまりグリコーゲンを摂取するためです。人間は運動時にエネルギーを消費するのですが、そのエネルギー源は基本二つです。一つは体脂肪です。しかし体脂肪は分解するには時間がかかり、また一度に消費できる量も限られています。

即効性があるエネルギー源はグリコーゲンです。グリコーゲンは例えばエナジージェルなどを経口摂取できますが、筋肉中にも存在しています。

この筋肉中に存在する体内グリコーゲンの量を試合当日に最大に持っていくことを、カーボローディングと言うのです。体内グリコーゲンというのは1日で調整できるものではないので、普通は試合当日から遡って数日間、もしくはそれ以上の期間において調整を図ります。

試合前の一定期間練習負荷を下げることによって、筋肉疲労の回復を図るとともに、筋肉中のグリコーゲンの量も回復させ、試合当日に向けて最大になるように調整を図るのです。そのため、試合の数日前から炭水化物の摂取量を増やすことをやるのです。

例えて言えば、カーボ・ローディングとは燃料をできるだけ満タンにしてカーレースにでるようなものです。

昔は試合の数週間前から炭水化物の量を減らして、炭水化物の飢餓状態を意識的に作り出して、炭水化物の摂取効率を上げてから大量の炭水化物を摂取するというようなことがあったようですが、現在ではそれは体調を崩すリスクが高いということで行われなくなりました。

錦織選手やコンタドール選手のケガからの復帰と望外の快進撃には、このようなカーボロードの擬似的な作用が働いたのかもしれません。シーズン真っ盛りの夏に、身体的な疲労はピークを迎えていたはずです。したがって体内のグリコーゲンの量も最適値を下回っていた。そんなところに突然の怪我による休養が強制的になされたのですから、体内グリコーゲンも十二分に回復したのではないでしょうか。

特に錦織選手はトーナメントの上位に進むにつれ、体力的な問題から敗退を余儀なくされていたことが多かったわけですが、このときは準決勝で世界ランキング1位のジョコビッチ選手を破るなど、最後まで体力が持ちました。直前の休養がこの体力の伸びにつながったことは間違いないでしょう。

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