アメリカスポーツ界が殿堂を大事にする理由

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アメリカのスポーツ界は殿堂というものを大切にしています。殿堂というのはそのスポーツ競技に貢献した引退選手を顕彰し、その業績を後世に伝えていく制度のことです。

メジャーベースボールでいえば1846年にはじめて野球のゲームが行われ、1869年に最初のプロ野球チームであるシンシナティレッドストッキングスが誕生し、タイカップ、ベーブルース、ジョーディマディオから始まったスター選手の系譜をしっかりと記録して顕彰していく顕彰制度を、ハード・ソフト問わず整備してきたのです。

チームにおける永久欠番制を含めて、アメリカはことあるごとにファンに対して過去の名選手の業績を思い出させようとします。往年の名選手の始球式は頻繁に行われますし、記録上の節目では、新しい記録を作った選手に対して抜かれた選手が代表して球状内で顕彰することは度々あります。

早いうちからMLBはNYのクーパーズタウンにベースボールの殿堂施設をつくり、そこには大量のMLBに関する記録を収納しています。最近はそのアーカイブをデジタル化して、多くの媒体に公開しているようです。

アメリカスポーツ界がこれほど殿堂に力をいれるのは、”歴史”というものをかなり意識しているからです。そしてそれはアメリカが比較的若い国であり、建国以来の歴史が短いということが影響していると思います。

歴史が短いがゆえに、その欠損を埋めようとして逆に歴史を大切にする 。自分たちの足跡をしっかりと伝えて残して生きたいという欲求が、殿堂制というものを重要視する気概につながっているのだと思います。

もう一つは、やはり多民族国家というものも大きく影響していると思います。アメリカ国民統合の象徴として、アメリカは人種の垣根を越えたスター選手を必要としているのです。つまりアメリカのスター選手というのは、スパイダーマンやスーパーマンのようなアメコミのヒーローを具現化した存在なわけです。そうしたヒーローを殿堂によって顕彰することで、その存在を確かなものにしているのです。

そのアメリカスポーツ界も、昔ほど人気がないように思えます。大きな理由のひとつは、多くのスター選手にドーピング問題が発生したことでしょう。陸上競技ではベンジョンソンや、カールルイス選手や急逝されたフローレンスジョイナー選手にもその嫌疑はかけられています。

MLBではマグワイヤ、サミーソーサ、アレックスロドリゲス、バリーボンズ、クレメンス投手など錚々たる選手がステロイドをはじめとした薬に頼っていた事実が発覚しました。そしてサイクルロードレースではツールドフランス7連覇のランス・アームストロングなどです。

日本は国としての歴史が長いがゆえに、逆に歴史を人為的に刻んでいくという意識がすこし足りない気がします。日本の野球殿堂も最近はしっかりとした存在感をだそうとしています。ただ日本の殿堂は東京ドーム内にあり、やはり理想はアメリカのように独立した施設内にあるべきだと思います。

始球式でも日本の場合はマーケティングに行き過ぎているのか、すこし今が旬のタレントに傾きがちの気もします。過去の名選手をもっと出してほしいと思いますね。

かつてはアガシやサンプラス選手などを輩出したアメリカテニス界でも、女性ではセリーナウィリアムズ選手などがいますが、男性ではアメリカ人選手の姿は上位にはありません。MLBでも活躍しているのは中南米の選手が多いですよね。

歴史を大切にしてきたアメリカのファンにとって、不正はその競技内にとどまらずスポーツ界全体に影響を及ぼしていますし、おおきな失望につながったのだと思います。日本も国技といわれる相撲界で八百長問題が出たときに、大きく人気が下がりました。そのことと似ている側面があるのでしょう。

日本のスポーツ界もアメリカの良いところは学んで、悪いところはそうならないよう反面教師とする必要があります。自分たちが作ってきた歴史をどの競技でも大切にしてもらい、また引退後の選手へのレスペクトも忘れないようにしたいものです。そして顕彰された選手も引退後であっても、ボランティア活動を通して若い世代のファンを育てていってもらいたいと思います。

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