線虫でがん検診

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九州大学の研究グループが線虫を使って、尿一滴からがん細胞の有無を高精度に判別する検定方法を開発したことが報道されました(尿一滴でがんを早期診断)。大変興味深いので、ここで紹介したいと思います。

今回使われた線虫は、”カエノラブディティス・エレガンス”とよばれるもので、普段は土壌に生息しています。研究に適していて実験でもよく使われるので、モデル生物の代表的な線虫といわれているそうです。

この線虫はどうやらがん細胞を”匂い”でかぎ分ける能力を持っているそうで、それを応用してがんの識別に使ったということです。

紹介記事によりますと、”242人を対象に線虫のテストを実施した結果、がん患者24人中23人に対して、線虫が陽性の反応を示した。がんの種類や進行度にかかわらず判別でき、早期発見が難しい「すい臓がん」にも反応した”とあります。

特に注目するのはがんの種類や進行度によらないということでしょうか。現在普通に使われている腫瘍マーカーよりも精度が高いというのですから驚きです。

線虫を使った治療というので有名なのは、糖尿病で壊死した体組織をうじ虫に食べさせて治療するというものです。これは「マゴット(うじ)・セラピー」とよばれています。うじは壊死した部分のみを的確に捕食し分解してくれます。その際うじは分泌液をだすのですが、これが壊死した細胞を除去して代わりに肉芽細胞の伸張を助けてくれるので、新しい皮膚細胞が育ってきます。

患部周辺の出血などがひどくなく、炎症が激しくないならば、このマゴットセラピーはかなり有効な治療法だと認識されています。うじはどういうメカニズムか、腐食した組織と正常な組織を識別して、腐食した組織のみをきれいに捕食・分解してくれるのです。

外科医のメスではなくうじを使って腐敗部分を除去する理由は、メスではきれいに正常な部分と腐食した部分を仕分けることができないからです。うじは細胞レベルでその区分ができるのです。ヒトの手の限界ですね。

今回のがんを判別する方法も、このマゴットセラピーの延長ですね。もともとアニサキスが胃がんの患部に集まる性質を知っていたところから思いついた検診方法らしいです。アニサキスというと以前、アニサキスの食中毒について書いたことがありました(アニサキス食中毒にご注意)。

こうしてみるとちょっとグロテスクで気持ち悪いと思われている寄生虫さんも、ヒトの役にたってくれる頼れる存在に思えてきますね。研究が進んで、できるだけ早いうちに実用化してくれることを望みます。

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