筋肉をつけると俊敏性は落ちる!?

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スポーツ選手が肉体改良に取り組む際常に付きまとう問題は、筋肉をつけすぎると俊敏性が落ちてしまうのではないかという疑問です。

日本でも常にこの種の議論が行われています。たとえばプロ野球界でいえばダルビッシュ投手や城島選手などは常々日本人選手はもっと筋肉量を増やすべきと唱えていて、それに対する反論もあります。

イチロー選手などは日本人の骨格でむやみに筋肉量を増やすことは身体を重くするだけであるといっていますし、サッカー界でいうと長友選手は高校時代にむやみに筋肉量を増やしてしまって失速した経験から、大事なのは体幹強化だと考えています。

このようにプロのスポーツ選手の間でも大きく意見が分かれている状況ですが、この疑問について個人的な意見を述べてみたいと思います。

まずそもそも「筋肉をつけると身体が重くなる」というのはどういう状態なのでしょうか。筋肉は脂肪よりも重いので、筋肉と脂肪の割合が筋肉のほうに多くなればその分重くなるのはとうぜんですが、筋肉をつけることでパワーが発揮されますので、本来筋肉量が増えれば身体が重く感じることは無いはずです(そもそもそれが目的です)。

その疑問に答えると、実は人間の身体は筋肉”だけ”をつけることはほとんど不可能なのです。筋肉のエキスパートであるボディビルダーの選手の筋肉のつけ方をみてみるとそれがよくわかります。

ボディビルダーは目標とする大会に向かって筋肉を集中的につける増量期と、その筋肉を維持したまま脂肪だけを落とし筋肉を露出させる減量期の二つを経験します。

まず筋肉を増やす増量期においてはビルダーは消費カロリー以上にカロリーを摂取します。この時期には筋肉の源になるたんぱく質以外にも炭水化物や脂肪やビタミンなどありとあらゆる栄養素を摂取して筋肉の”肥やし”にします。筋肉量というのはそうそう簡単に増えるものでもなく、プロのビルダーさんでも年間せいぜい2キロが限界だといいます。したがって増量期には努力して増やした筋肉以上に脂肪が身体につくのです。

次に減量期ですが、このときビルダーは鳥のささ身などたんぱく質のみを摂取して、余分なカロリーを控えてダイエットを行います。増量期についてしまった体脂肪をそぎ落とし、せっかくつけた筋肉を落とさないで維持するための筋力トレーニングを並行して行います。最後は体脂肪率を5%程度にまで絞り込んで仕上げるのです。

このときビルダーが身体が重いと感じることは無いでしょう。筋力は増加しかつ体脂肪は減少しているので、パワーウェイトレシオ(体重1単位当たりの筋力)はMAXだからです。

したがってもし選手が筋トレ後身体が重くなったと感じたなら、それは筋肉の発揮するパワー以上に体脂肪が増えてしまった状態である可能性が高いと思います。筋肉のパワーを引き出すためには、本来そこから筋力を維持したまま体脂肪だけを落とす減量をはじめなければならないのです。つまりパワーウェイトレシオが最適値になっていない段階の可能性が高いということです。

選手にとって大事なのはパワーウェイトレシオであり、パワーウェイトレシオを増加させるにはパワーを上げる(筋肉量を上げる)か体脂肪を落とす(体重を減らす)かの二つの方法があるのですが、そのためには時期を前後にして増量と減量を実施しなければならないのです。

ここがサッカー選手のような筋量を必要とする体のぶつかり合いという格闘的要素と、長時間走り続けないといけないという持久力の要素の二つを兼ね備えていないといけないスポーツ選手の難しいところなのです。

したがってよく言われるような「筋肉をつけると俊敏性が落ちる」というよりは、「筋肉をつけようとして筋肉以上に体脂肪がついてしまうため俊敏性が落ちてしまう」というのが正確なところではないかと思います。

大事なことは筋肉量の増加だけで満足しないで、パワーウェイトレシオを意識しながら体脂肪を適切にコントロールすることなのです。しかしそれを長いシーズンを通してコントロールしていくというのはかなり難しいわけです。

香川選手についていえば、やはり俊敏性を武器にサッカー選手としてのキャリアを積み上げてきた選手ですから、重い筋肉をまとっての体の使い方を覚えるのはすこし年齢的には遅かったかもしれません。年齢的にも俊敏性が落ちていく時期に、さらに重い筋肉をつけてしまうと、プレーバランスを崩してしまうのは自然なことのようにも思います。

10代後半から30代前半までの長い選手キャリアのなかで、どのような筋量が最適なのか、その時その時の微調整の下で、選手個人が試行錯誤していくことになると思います。

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